自説を通すには ~ 君の意見に賛成だね。でも、もしこんな風にできるんなら・・・ ~

「たとえば私がちょっと無理を言ったとしよう。彼はまず「君の意見に賛成だね。僕に異論はないよ」と一歩退いてから、やんわりと「でも、もしこんな風にできるんなら・・・」と切り返し、さらに「じゃあ、こうすれば・・・」と誘導し始め、自分の意見を認めさせてから「これはみんな君が決めたことだからね」と確認し、最後に「じゃあ、君の意見どおりにしよう」となって一件落着するのである。」(p.48)
ウイルスバスターの冒険』(2000 S.チャンら)より




自分の意見を通そうと、相手におおげさに自分の意見の正しさを声高に主張して、かえって逆効果になっている場面には、皆さんもよく出くわすのではないでしょうか。円満に合意するには、違いを強調するのではなく、お互いに同意できるところ起点に、自説をあたかも「忍び込ませていく」ことが大事です。つまり、「同意から合意へのプロセス」、と言ってもよいと思います。


そのために必要なことは、雄弁よりも傾聴で、いわば「君の意見」の要点を的確に把握することが大事です。優秀なセールスマンは確かに口も達者ですが、それ以上によく相手のことを知ろうとするものではないでしょうか。


ウイルスバスターの冒険―トレンドマイクロ創業物語(2000 S.チャンら)
台湾のセキュリティソフトITベンチャーであるトレンドマイクロの創業史ですが、中国文学をルーツにもつ著者 陳 怡蓁(ジェニー・チャン)の戦略的な観点は、あたかも古代の十八史略や孫子を彷彿とさせます